太陽のようにまぶしく、雪のように白い神に出会った。そう、戦場で。
……これがアニメでも漫画でも小説でもなく、ある男性の実話というのが……あー……新聞記事を読んでのけぞりそうになりましたです。
11歳で初めての人殺しをした子供は、内戦の続く祖国で所属する組織の兵士として24歳までの間に約2万人の(敵側陣営の)人間を殺し、「残酷な殺し屋」「悪魔の化身」と呼ばれ恐れられていました。が、24歳の時に戦場で上記の神と出会い、「何故人を殺しているのか」と問い掛けられた事によって人生が180度方向転換します。
なんとその後彼は牧師になって神の教えを説くため、どんな犯罪の巣窟だろうが貧民街だろうが危険地帯だろうが足を運び、ヘロイン中毒の若者を救い、少年少女に「人は変わる」と未来への希望を与え、多くの人を殺してきたギャングを改心させ真っ当な道へと導いて、今や人々の崇拝と敬愛の対象になっているという……。
けれど彼が殺してしまった2万人の遺族側は現在も憎しみを抱き、当然ながら犯罪者として裁かれる事を望んでいまして。
ここで彼が「戦争だったんだから仕方が無い」とか言って自分を正当化しようとかしたら崇拝者達も「なーんだ」と幻滅して離れていくかもしれないのですが、「裁かれる事は怖くない。刑罰を受ける」と穏やかに応えてしまうものだから……。
昔の名前のまま、顔も変えず行動していたという事実はある意味重いです。普通なら整形して、名前変えて出直すよねぇ。以前とは完全に別人格だし。だのに変えていない……贖罪の為の活動だから……と判断していいのでしょう。
年上の犯罪者までが、彼と出会ったその日から更正し、人殺しをやめて支援活動に身を投じるようになったというのは、半端でないカリスマ性ですね。
しかし24歳までの彼は、殺した相手の耳を切り落として紐でつないで首にぶら下げていたような、戦闘の前には幼い子供を殺してその心臓を食べる、なんておぞましい儀式をしていた人間だったんだよーっ!
それが37歳の今は……穏やかで温かい人物、どんな人間に対しても愛情を向け慈しみ救おうと手を差し伸べる、そんな男に変わってしまっているというのが……。少女は彼を憧れの眼で見つめ、少年は彼の言葉に目頭を押さえるという現実を前に、国側も彼を戦争犯罪者として捕らえて良いのか悩んでいる模様です。まー、捕らえたら間違いなく死刑確定だろうし。何せ殺した人数が2万人……。うわぁ。
ジョシュア・ミルトン・ブラヒ、リベリアの戦争犯罪者にしてカリスマ牧師。元リベリア民主統一解放戦線所属兵士。彼に待つ未来はどんなものなのか……そして彼が戦場で出会った神とはいったい……? 謎です。
でもって記事には彼の所属組織の敵であるリベリア国民愛国戦線のやった犯罪行為も記述されてました。10歳の子供の目の前で両親を殺し、子供に対しても刀で両腕を切り落とし放置、という真似をやったそうで。
そんな状態で物乞いをしながら生き延びた若者は、ジョシュアの犯罪について聞くと「許すべきだ」と言うそうです。うーん……。
現実はアニメや小説より過酷だな……。そして単純な善悪では割り切れない世界でもある。
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