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久遠の日々徒然

同人とか小説とか映画とか日常とか(^-^)2007.9.15設置♪

児童文学とは、小学生でも読める文章で……
 大人でも頭を抱えたくなるような複雑な問題を提起するものだったのかもしれない、と昨日仕事終えて帰宅してから読んだ『ウェストマーク戦記2巻 ケストレルの戦争』で思いました。
 1巻はまだユーモアファンタジーの名残があったんですが、2巻はそんな甘さ捨てました。ファンタジー世界なのにシビアです。と言うか、戦争の描写ハンパねえっ! です。どんな風に人が殺され、飢えに悩まされ、集落が焼かれていくか。そしてどんな風に本来善良なはずの人間が変わっていくかを、容赦なく書いてます。
 私はいまだかつて小学生向けの児童文学で、主人公の理解者である親しい友人があんな殺され方をした小説を読んだ覚えはないです。ええ、きっとないです。
 それが人間の遺体であると最初わからなかった。牛肉の塊だと思った……なんて。
 目玉があって、口から赤い泥のようなものを吐き出していて、そこまで確認してやっとそれが、人の原型を留めていない、引き裂かれた友人の亡骸だと認識して正気を失う主人公って……。
 これは作者が10代の時に第二次世界大戦に参加し、ヨーロッパ戦線で戦った経験から得た……のか喪失したのか……とにかくその結果として書いたお話なんでしょう。自分が体験し、目撃してきた事を吐き出さずにいられなかったのだな、という感じの内容です。凄まじいです。
 作者が行動を共にしたのはドイツに侵略されたフランスのレジスタンス部隊だった、ってのが大きいと思います。物語の中でも主人公は隣国からの侵略に抵抗する市民軍の仲間と行動を共にしてますので。
 しかし……最初の頃敵兵を捕虜にせず殺した、と仲間を率いている友人を責めていた主人公なのに、そんな自分を理解し、「君はそれでいいんだよ」と組織の中で非暴力を貫く存在を許し、代わりに汚れ仕事を引き受けていた親友が上記のような惨たらしい殺され方をしたと知って怒りに変貌していく様は……凄いとしか言いようがありません。
 彼が正気に戻ったのは、自分が恋人を恋人と認識できず殺そうとしたと、銃で撃ち抜いたと知った後。主人公の恋人は数奇な運命を辿って王位に就いた少女で、これ以上自国の民を死なせたくない、との思いから隣国の王と会って和平交渉すべく、敵地を抜ける為に敵国の兵士の服を奪い着用していたのです。だけど敵兵の服を着ている恋人を主人公は、殺すべき敵としか見られず、機械的に馬上の彼女に向けて引き金を引いた……。あああっ!
 でもねー、失血で倒れてそれでも己の義務を果たそうとする恋人は、鬼のような形相に代わっている主人公をひとめ見ただけで自分の愛する男だと気づいて、微笑むんだよ。「見つけた」って。そもそも彼女は行方不明になった恋人を捜す為に旅に出て、そこで侵略してくる敵と遭遇し、戦闘指揮をとる羽目になっていたのだから。
 うう、児童文学侮りがたし。とにかく凄まじい物語なのですが、これで終わりません。3巻に続きます。あ、表紙の絵は3巻が一番好きだなー♪
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